本年度の公共建築物等の設計段階からの技術支援事業とコスト比較事業の成果報告会が木材会館で開催されました。本年度は、3地域の支援成果報告とコスト比較、岐阜県御嵩町による森林経営信託について、木造化木質化20のポイント解説&パネルディスカッションという、盛りだくさんの内容でした。会場には、一般参加の申し込みも例年以上に多く木造化への関心の高まりを感じられます。成果報告会の概要をご紹介していきます。

地域支援成果

本年度は、岐阜県御嵩町、広島県竹原市、石川県能美市への木造化技術支援が行われました。3地域共に初めての参加ということもあり、基礎的な木造化情報の支援に始まり、各地の実情に合った支援が行われました。3地域に今回共通して得られた成果としては、「木造ができるということが分かったことで、木造化がすすんだ。」ということです。当たり前的なんですが、実はそこが一番難しい。木造施設の実例を見れたこと、構造設計の方法や考え方がわかったこと、製材所へ初めて行って見て学んだことでより具体的に話せるようになったことなど、こういったきっかけをつくることからも木造化は始まることが実感できました。これからの事業の進捗が楽しみです。

森林経営信託と木造化

支援先の御嵩町は、環境モデル都市として取り組んでいることもあり、「森林経営信託」に取り組んでいる全国の中でも珍しい自治体です。通常、町有林は町が管理するのですが、専門家ではないことや単年度ということから効率が悪い面があります。そのため、森林信託によって、森林組合が主体的に管理していくことで、木材の販売が効率的になり、町職員も行政サービスに専念できるという利点があります。この仕組みがなぜ、木造化によいのかというと、中大規模木造建設が始まると、必要な材料を必要な時期に効率的に調達する必要があります。その際、森林組合が林道などを整備しているおかげと、全体的な管理を行っていることで、材の搬出、調達がよりスムーズにできる点です。すごい!設計のしがいもありそうです。

木造化木質化20のポイントパネルディスカッション

本年度で7年目になる技術支援事業。その取り組みをまとめ、木造化木質化へ向けた20の支援ツールをまとめました。その内容は、木活協HPからダウンロードできます。支援ツールにも書いていますが、地域材で地域の関係者で木造化していくには、「木材コーディネーター」という、各関係者を調整できる人材の重要性が見出されています。そこで、パネルディスカッションでは、全国の中で木材コーディネーターと言える各分野の3名にご参加いただきました。

鶴岡市役所の後藤章子さん。行政の立場での木材コーディネーターです。ご自身が担当された朝日中学校の解説も含め、丸太供給コントロールの難しさや地元下請け率90%&技術力の高さが木造化を可能としていること。などを教わりました。そしてなにより、すべての関係者にいえるのですが、「木のこと、木造のこと、勉強しろ!」という強いメッセージいただけました。

熊本県木造設計アドバイザーの坂田雅孝さん。木材供給者であり県に委託されている木材コーディネーターです。熊本県での、木造設計を行う設計者への支援システムを解説いただきました。木造化に取り組んでいるとJAS材の等級区分の考え方をどのように関係者間で共有できるかという現場レベルの課題も提示いただきました。設計者がいかに木材、木造を学んでいくかが大事、そして設計の情報をいかに木材、山側へ伝えられるかが必要であることを実体験踏まえ伝えいただけました。

白鷹町森林再生・木材コーディネーターの吉田博之さん。建築設計者でありご自身で木造施設設計もし、町からコーディネーターも委託されています。白鷹町では、町産材活用と庁舎建築ということで始まったが、製材所や乾燥施設を新たに再構築していくことに取り組んだプロセスを紹介いただきました。長年地元で木材関係者や施工者と長年築いてきた信頼関係がベースとなり、おきたま木材乾燥センターを地域の関係者で立ちあげました。そこで製材乾燥した材料で庁舎建設やそこに続くこども園や特養などの建物への木材活用の展開、木造技術の広がりがあります。何もないところからの展開普及事例紹介いただきました。

3方に共通していることは、立場が異なりますが、木造化に必要なそれぞれの立場を超えて、関係者間の調整ができること。木材、木造化の知識があることで、段取りができること。そして必要な情報を伝えられること。だと思います。そういう人材を「木材コーディネーター」と言えると思います、こういった人材、立場をもっと、伝え、人材育成し、木造化木質化を地域で取り組んでいくことが、木材活用、山の保全にもつながります。

木造と鉄筋コンクリート構造のコスト比較

「木造は高いからダメだ!」というあいまいな根拠で、木造化が進まないということがあります。本当にそうなのか?を検証する事業です。今回は、RC造2階建の小学校を木造にするとどうだろうを検証中なので、ほぼまとまった内容を北瀬が、中間報告させていただきました。詳細は来月かさ来月には木活協HPに掲載予定です。ちなみに、昨年度の木造と鉄骨造の比較はこちらからダウンロードできます。規模や設計方法によっては、木造は安いといえます。何より、RC造等に比べると木造は軽いという利点がります。もう少し内容精査し、公開版まとめます。

これから

林野庁の宮脇慈さんからは、林業政策の変化、森林環境税やこれからのJAS材について、今後の木造化支援のことなど解説いただきました。山の木を活かすために、学ばねばならないこと、取り組まねばならないことたくさんありそうです!

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