2019年3月11日公共木造技術支援の今年度の成果報告会が開催されました。本年度の支援は3団体、広島県、高知県、埼玉県での取り組み報告でした。その他に、埼玉県杉戸町での木造公共建築の取り組みや森林譲与税に関する報告もありました。

広島の団体は、今まで取り組んできた県産材普及の内容をさらに進化させ、設計者と木材関係者がより良い情報共有をできるための取り組みを行っていました。認定こども園の設計を通してより具体的に県産材を使える部分を考えたことで、木拾い表やプレカット図の内容がより精査されたところが魅力的でした。
設計者と木材関係者が議論したことで、計画段階から竣工までのプロセスで必要なことをまとめた内容は、他の団体でも参考になる取り組み方だと思います。

今回支援を担当させていただいた、高知県の取り組み報告です。高知県の四万十町にある休校舎は、RC造でしたが劣化により防水等を修理なければならない状態でした。今回、地域のコミュニティー施設としてリノベーションする計画になっています。その際に、RC造の建物を木造で包むと言う画期的な計画案が作られました。

瓦屋根を乗せて木造のバルコニーを増設し内装木質化をする計画は、木造校舎が佇む原風景を新たな風景として再構築する計画でもありました。

この計画案をもとに高知県産材を効率的に利用するためにはどうすれば良いのだろうか、また、高知県産材の普及に今回のリノベーションがモデルとなるようにするためにはどうすれば良いのかを地域の方と検討しました。

設計者と木材関係者の方で情報共有を行うことで見えてきたことがあります。木拾いなどで木材の品質を指定する際に節等の状態を幅を持って指定することで、コストや納期のバランスが取りやすいと言うことが見えてきました。

また高知県でも県産材普及のために非住宅木造建築物に関する相談窓口の設置が計画されています。そこで熊本県の木材設計アドバイザーの取り組みを参考にして、高知でこれから取り組むべき留意点などをまとめたことを報告いただきました。

高知県産材を活用したRC造校舎のリノベーションは、完成すると休校舎活用と県産材活用という点で注目すべき事例になりそうで楽しみです。

埼玉県では構造設計者の方々が中心となり木造ワンストップ相談窓口と言う取り組みが始まりました。生協の事務所兼配送センターの計画があり当初は鉄骨造の予定だったのですが県産材を使えないかという相談を受けたことで窓口の取り組みが行われました。そこで県産材の事やコスト、耐震性能のことなどを発注者へ伝えることで、木に対する理解が深まりました。最終的には内装木質化が実現することにつながりました。初めての相談窓口の取り組みのおかげで、今後計画段階から竣工までの間にどのような相談窓口としての取り組み方があるかということの検討も進めることができたということでした。

3地域の取り組みから感じられる事は、各地で木造化木質化が取り組まれることが増えてきている。地域でどのような体制を組み、設計者が発注者や木材関係者と情報共有していけるか、そのための体制づくりを地域で考えるという段階に来ていることが伺えました。

埼玉県の杉戸町の取り組み報告では、平成22年からつくり続けている公共木造施設を5物件報告をいただきました。5物件つくり続けることで木造化のノウハウが構築されています。コストのバランスも見えてきました。1つのまちでこれだけ木造の施設が作り続けられているのは、担当者の熱意によります。ここで得られた木造化のノウハウは様々な自治体でも参考になる内容だと感じます。町単位では、おそらく人口割合に対し最も木造施設が多い地域かもしれないというコメントが面白かったです。

最後に林野庁の宮脇さんからは、森林環境譲与税に関するお話がありました。伐期の木材を有効活用するために様々な制度が設計され、これから活用されることが期待されます。譲与税活用イメージとして林産地域と都市部の木材交流などの取り組みが予想されます。また、より地域の木材を活用できるよう木造設計アドバイザーの人材育成などにも活用されそうな様子です。

来年度も、木材活用の取り組みに期待が高まります!

その前に、年度末の取りまとめがんばります。

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